Bollywood No.056
Delhi-6 (2009)
いまさらですが2009年のこの作品。タイの劇場で鑑賞した後、インドでDVDを購入。
他のいくつかの作品と同様、毎年1度はリピート鑑賞するお気に入りの作品です。
この作品の評価は低く評判のわりにはヒットしませんでした。
しかし最初に見たときからなぜか気になる作品。
- Delhi-6 (2009)
- テキトーに解説
- Cast
- Abhishek Bachchan as Roshan Mehra
- Sonam Kapoor as Bittu Sharma
- Waheeda Rehman as Annapurna Mehra (Dadi)
- Rishi Kapoor as Ali Baig
- Atul Kulkarni as Gobar
- Deepak Dobriyal as Mamdu
- Om Puri as Madangopal Sharma
- Vijay Raaz as Inspector Ranvijay Thakur
- Divya Dutta as Jalebi
- Daya Shankar Pandey as Kumar Kulshrestha
- Music Scene
- まとめ
テキトーに解説
アメリカで暮らすNRIのRoshan(Abhishek Bachchan)は死期が近づきインドで死にたいという祖母のDadi(Waheeda Rehman)の付き添いでインドにやってくる。
オールドデリーで過ごすRoshanはDadiとゆかりのある地元の人々と通じ自分のルーツを見つけていきます。
あらゆる個性を持った人々に加え宗教問題や謎の"Kala Bandar"騒動を通じオールドデリーの事を理解していきます。
そんな中でDadiと旧知のMadangopal(Om Puri)の娘Bittu(Sonam Kapoor)とRoshanは互いに惹かれあっていくのです。
終盤は宗教紛争・"Kala Bandar"事件などもろもろ重なり合いバタバタした結末になります。
しかしそこにはオールドデリーの雰囲気がありなんかいいんですよね。。
Cast
この作品の一番の魅力は様々な個性を持ったキャスト。
あらすじよりキャスト紹介でストーリーを分かり易くします。
特にサブキャスト達はRakesh Omprakash Mehra監督のお気に入りのキャスト達、同じ年齢で似たジャンルの映画を撮る巨匠Ashutosh Gowariker監督もLagaan(2001),Swades(2004)で期用しています。
しっかりした演技力を持ち各々独自の個性をだせ名優たちが共演しています。
Abhishek Bachchan as Roshan Mehra
主人公Roshanを演じる。
米国在住NRIである彼の視点でみるオールドデリー(人や文化)がこの映画のテーマになっている。
50歳近くなってきたせいかここ数年は完全に親父化しており腹回りも増してきたように見えます。最近は王道ではなく一風変わった作品や役柄を演じてますね。
唯一やり残した感のあるFilmfare Award for Best Actorはどうしても欲しいでしょう。
父Amitabh Bachchanは5度、母Jaya Bachchanは2度、奥さんAishwarya Rai Bachchanも2度 主演俳優賞を受賞してます。
キャリヤ前期にはSRK、Aamirの壁があり同年デビューではHrithik Roshanその後にはRanbir Kapoorが登場してしまったために今一歩のところで逃してますがまだチャンスはあるでしょう。
本作での演技は賞レースにカスリもしませんでしたが、個人的には評価高いですね。祖母に付き添ってきたオールドデリーで土地の宗教観に興味を持ち、モスクやヒンドゥー寺院に足を運びます。グローバルな考え方を持っているせいで受け入れられない時期もあり最後は小さな火種から勃発した宗教紛争の被害者にもなってしまいました。
その際、なんとか騒動を治めたいRoshanは「ここには誰も悪い人はいない、皆お互いを理解しなくては!」と言い聞かせるも皆耳は貸さず。。。
ストーリーの終盤、鏡を持って叫ぶ狂人
「鏡の中の自分を見ろ! これがお前たちだ! 」と小さな事で争っている人々の愚かさを伝えていますが、これを理解したのはRoshan一人。。
アメリカで育ち、自身もイスラム教徒とヒンドゥー教徒の両親から産まれているためこの争いの愚かさがわかり、また争ってしまう理由が分からない。
最後は争いの原因となるスケープゴートとされMamdu(Deepak Dobriyal)に銃でうたれてしまう。
その間、天国にいる亡き祖父(Amitabh Bachchan)と出会い、最後はこの世に戻ってきます。
当時は酷評されていた派手なダンスはなく、立場的に土地のことがよくわからない異邦人的な役なのが彼には良かったですね。。
Sonam Kapoor as Bittu Sharma
デビュー2作目!
デビュー作の演技は評判がわるかったのですが、本作でのSonamはキャリア初期ではベストのハマり役でとってもカワイイ。
Madangopalの娘でTV番組Indian Idol出演を夢見る、父に強引に結婚を決められたため写真スタジオのSuresh(Cyrus Sahukar)と逃亡を画策するもRoshanの介入によりキャンセル、最後はRoshanとお互いの気持ちが通じ合いハッピーエンド一歩手前で映画は終了。
わがままで勝気ないわゆる小娘を演じるも仕草やキャラがカワイイ。
その後数年の演技もパッとしなかったので本作はかなりいい線行ってたと思います。
Waheeda Rehman as Annapurna Mehra (Dadi)
Roshanがオールドデリーに来るきっかけをつくる人物。
とてもチャーミングなおばあさんを好演。当時71歳で現在のところ2021年の83歳まで女優を続けてます。
もちろん全盛期は知りませんがFilmfare Award for Best Actressを2度受賞の名女優。
Delhi-6では本人はあまり大きなアクションはせず彼女の周りで人々が動き回ってました。もめ事があってもこういう人が一言話すと治まってしまうような不思議な魅力を持った役柄でした。
Chandni(1989)のお母さん役なんかは良かったですね。
本作でも共演しているRishi Kapoorが先に逝ってしまうとは。。。
Rishi Kapoor as Ali Baig
本作の愛すべきキャラクターの一人。
Roshanの母親に恋をしていたが、彼女の結婚後独身を貫いている。一見遊び人風ですが世捨て人のようでなんでも知っている伝道者のようでもある。オールドデリーのカルチャーに困惑するRoshanの相談相手かつ理解者。
年をとったらこんな男になりたいな~と思わせる役でした。
Atul Kulkarni as Gobar
地域では皆にバカにされ小間使いにされている臆病者。
しかし、騒動の本質をRoshan、Ali Baigの次に感じており争いごとは好まない。
最後はJalebi(Divya Dutta)と恋仲に。。。
現在58歳で白髪に口ひげのナイスミドルになってます。
おっかない演技をさせると死ぬほど恐ろしい演技をする傍ら本作のGobarのような役柄も演じるマルチ俳優。
Deepak Dobriyal as Mamdu
イスラム教徒、オールドデリーで小さなお店を営む。
宗教紛争ぼっ発時には一番最初に被害にあり店を潰されてしまいます。
そこから対ヒンドゥー教徒となり最後は精神的にも追い詰められRoshanと解らずKala Bandalに変装したRoshanを銃で撃ってしまいます。
この人はボリウッドでは珍しいガルワールの出身、インド在住時は自分もガルワールに滞在しており彼の故郷であるPauriという美しい村にも行った事があります。
シリアスな役、サイコパスな役が多かったですがTanu Weds Manuシリーズでコメディアンの才能が開花。
お気に入りのサポートキャストの一人
Om Puri as Madangopal Sharma
一家の大黒い柱!でBittuの父親。
Bittuを無理やり(一応正式な見合い結婚)させようとするなど相変わらず頑固一徹の役を演じるOm Puri。
いつの間にか亡くなって7年が経ちました。
Amrish Puriなどこの手の怖い親父の代わりは未だに出てきてませんね。
多くの外国映画にも出演しており近いとこで『The Hundred-Foot Journey/マダム・マロリーと魔法のスパイス(2014)』なんかは良かったですね。
Vijay Raaz as Inspector Ranvijay Thakur
警官役、悪名高いインドの警官ですがチョイ悪くらい。。。
理不尽極まりないことはやりますが、Roshanを銃で撃ったManduはしっかり逮捕する。
相変わらず憎めない悪役をうまく演じます。
この人もお気に入りのサブキャストの一人
以前にも書いてますが、おそらく唯一の主演作品『Hari Om(2004)』で来日した際に少しだけ話をすることができました。
話し方は作中と同じような感じでしたがすごく優しかったのを覚えてます。
ベスト作品は未だに『Monsoon Wedding(2001)』のウェディングプランナー役でしょう。
Divya Dutta as Jalebi
説明不要!下記記事をご覧ください。
今回のJalebiは他の出演者よりも低カーストの掃除人役。
この人は雑な物言いや態度もうまく演じますので見た目のエレガントさがあっても役にハマってましたね。
彼女はこちらもおススメ
Daya Shankar Pandey as Kumar Kulshrestha
もしかしたらサブキャストとしては一番好きかもしれない!
今回もDelhiの騒動をお茶の間にお届けするTVレポーターを演じてました。出番は少なかったですが、この人は表情が実にいいんですよね。
この他にもRaghubir Yadav 、K.K. Raina 、Supriya Pathak 、Aditi Rao Hydari 、Sheeba Chaddha、Prem Chopra、Pavan Malhotra
などなど監督のレギュラー俳優が出演してます。
みんな魅力的!
Music Scene
担当は世界のA. R. Rahman
素晴らしい出来で個人評価は『特A』
"Arziyan"
本編の序盤とエンドロールで流れます。
特にエンドロールの鏡を覗く出演者バージョンは素晴らしい。
この映画で一番いいシーンだと思います。
まとめ
Delhi-6とはオールドデリー チャンドニチョークエリアのPostal Code 110006から来てます。
Delhiに住んだことはなく、Delhiでの泊りは毎回メインバザール(NEW DELHI)でした。
それでも地元の友人と二日に一度はチャンドニチョーク・Jama Masjid周辺を散歩してました。
たまに行って知った気になってましたが、このオールドデリーの深さはある程度住んでみない事にはわらない事なんでしょう。
この作品はオールドデリーに人々の雰囲気をちょっとだけ感じられますね。
終盤、グルの教えをきっかけにヒンドゥー教徒が暴発!オールドデリーは宗教紛争になります。こんなバイオレンスなシーンがありながら本作に悪役がいません。
こういった作品は後味がよくて何度も見返したくなるのです。
先ほどエンディングソングが名シーンといいましたが、エンディングのちょっと手前、RoshanがManduに銃で撃たれ生死を彷徨い、戻ってきたところで息を吹き返します。
Manduの一撃で暴動をしていた両者の時間を止めます、Roshanが息を吹き返したところで悪い魔法が解けたように、今度は全員でRoshanを病院へ連れて行くべくリキシャーを呼び、道を開け、DadiとRoshanに付き添います。
この切り替わりもこの作品に悪人が居ないことを示しており名シーンの一つです。
評価はされなかった作品ですが、こんな作品をもう一度見てみたいですね。
公開後15年経ってますが、このジャンルの作品はほとんど作られていない気がします。
今後若い監督たちに期待です!